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2022.1.25

接客ロールプレイングとは


接客ロールプレイングは、接客の疑似体験を通して実践的に接客力を身につけることができる研修方法です。
その効果は接客業界で広く知られるようになっており、多くの店舗・館が研修として導入しています。
この記事では、接客ロールプレイングの概要と効果を中心に、その魅力をお伝えします。 接客業に関わる方々には、ぜひ読んでいただきたいです。
今まで接客ロールプレイングを知らなかったという方も、分かりやすく解説しておりますので、ぜひ目を通してみてください。

接客ロールプレイングとは

接客ロールプレイングとは、お客様役を設けて行う接客の疑似体験のことです。 実践的な接客練習を実現できるため、接客業へ関わる方の研修として広く使われています。
実際に全国各地の店舗で接客ロールプレイングが研修として利用されており、日本ショッピングセンター協会が主催する全国大会も毎年おこなわれています。

メリット

多くの店舗で取り入れられている接客ロールプレイング。その効果はどれほどのものなのでしょうか。

接客ロールプレイングを取り入れた研修は、参加スタッフの接客力に大きく貢献し、そこから生まれる相乗効果で店舗全体にさらに多くのメリットをもたらします。
ここでは主に4つの効果について触れていきます。

接客力向上

シンプルな座学の研修に比べ、実践を交えることによりすぐに現場で使える接客力がつきます。
また座学の研修と組み合わせると、インプットを即座にアウトプットすることで身に付きやすく、効率的にスタッフの接客力を上げることができます。

具体的な内容はこちら→

接客ロールプレイングを通して学べること

CS向上

接客ロールプレイングはCS(顧客満足度、Customer Satisfaction)の向上にもつながります。
まず単純に接客力が向上したことによって、質の良い接客を受けたお客様の満足度は上がります。
さらにロールプレイングに参加したスタッフが自身の強みを掴み、自分なりの接客として生かすことで、お客さまがファンになることもあるでしょう。
接客業にとってCSは非常に大事な指標であり、ないがしろにすると目の前のお客様を失う以上の損失を被ることになります。
消費者行動分析の専門家ジョン・グッドマンによると、1人のお客様が口コミを広める人数は、好意的ものなら4~5人、非好意的なものであれば9~10人にも上ります。
つまり接客の質が悪いと、目の前のお客様の満足度を下げてしまうだけでなく、多くの見込み客を失うことになってしまうのです。

先に述べたように、自分なりの接客ができるスタッフはお客様をファンにすることができます。
そのお客様は、何度も店舗を利用してくださることもありますし、お店について良い口コミをしてくださる可能性も高いです。
その口コミを聞いた方は見込み客となり、ご来店される可能性は飛躍的に上がります。
接客ロールプレイングは、これほどお店の売り上げに大きく影響するCSにプラスの効果を与えることができるのです。

ES向上

さらに接客ロールプレイングはES(従業員満足度、Employee Satisfaction)にも良い影響を与えます。
スタッフのESは、業務内容、給与、待遇、職場の人間関係、労働環境など、様々な要因によって変化します。 それは「働きがい」とも言い換えられます。
スタッフにとって嬉しい瞬間といえば、お客様から温かい言葉をいただいたときです。
自身の接客力が向上し、お客様から「あなたがいるからまた来た」と声をかけられることもあるでしょう。
また、そうして自身のファンを増やすことで売り上げが上がることもあります。
このように、接客ロールプレイングを通して学んだことを現場で生かし、それが変化や結果を伴ってくることで、働きがいを感じESの大幅な向上が期待できます。
また、店舗や館の他のスタッフさんと共にロールプレイングをしたことにより店舗間・スタッフ間のつながりが生まれます。
このつながりは、スタッフの心理的安全性に繋がり、ひいては生産性の向上にも貢献することがあります。
心理的安全性とは、組織行動学の研究者エドモンドソンが提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」のことを指します。
接客ロールプレイングではお互いにフィードバックをする機会を作ります。
ミスを非難するのではなく受け止め、改善のために何ができるのか共に考えることで、心理的安全性は高まりやすくなります。
Googleのリサーチチームによると、心理的安全性の高いチームは売上の改善や新サービスの立ち上げなどを効果的に実現しています。
スタッフの心理的安全性が高ければ、実際の業務の際にも円滑なコミュニケーションをとりやすくなり、最終的に店舗や館全体としての売り上げアップを目指すことができるということです。
効果的なフィードバックの方法についてはコチラ→

スタッフ同士で互いのロープレを見ながら、良いフィードバックをする

売上向上

接客ロールプレイングでは、お客様のニーズに合わせて的確に提案をする力を学び、身につけることもできます。様々なニーズを持ったお客様役を前にして練習を重ねることで、お客様が納得できる提案ができるようになるでしょう。この力を現場でも生かすことができれば、自分が提案したものを買っていただける機会が増えるかもしれません。 接客ロールプレイングで得られる接客力についてはコチラ→

接客ロールプレイングを通して学べること

接客ロールプレイングの効果は、目の前のお客様への提案にとどまりません。
先にも述べた通り、質の良い接客を受けてファンになったお客さまが口コミなどをしてくださることで、来客数が増加します。
また接客ロールプレイングを通して関わった店舗・スタッフの間につながりが生まれ、高い心理的安全性の中で業務を円滑に進めることができるようになります。
さらに店舗・館全体の雰囲気も良くなるので、お客様にもお買い物をより楽しんでいただけます。
接客ロールプレイングを取り入れた研修を実施すると、ビジネスとしての良い循環が生まれます。 このような循環を回し続ければ、最終的に店舗や館全体としての売上アップも期待できるでしょう。

デメリット

様々な効果が期待できる接客ロールプレイング。デメリットはあるのでしょうか。 やはり最大のデメリットは時間がかかるという点でしょう。1回のロールプレイングにつき、物販なら6分、飲食なら5分かかるので、フィードバックをする時間まで含めると、複数人が繰り返し行うとなるとかなりの時間を要します。日頃の業務で忙しいスタッフのためにも、できるだけ密度の高い研修にする必要がでてきます。 時間を無駄にしないためにはやはり事前準備が肝心です。予め研修を行う時のスケジュールは綿密に組んでおきましょう。 研修の目的や参加者のニーズをつかみ、それに合わせて内容を取捨選択する必要があります。その時間も惜しいという場合は外部に委託することをおすすめします。 研修スケジュールの管理からお客様役の派遣までお願いすることもできます。経験のあるプロに任せることで、研修効果も期待できるでしょう。 接客ロールプレイング研修のお問い合わせはコチラ 短時間で目的を達成するためのコツはコチラ→

接客ロープレ実施の際の留意点・ロープレの効果を最大化させるポイント

接客ロールプレイングを通して学べること

では接客ロールプレイングに参加するスタッフは具体的にどのようなことを学べるのでしょうか。
多様なお客様への接客練習を通して、研修前に目的として設定した自身の課題へのアプローチを探したり、接客に必要な知識やスキルを身につけたりする機会になります。
ここでは、接客ロールプレイングを通して得ることができるスキルを2つに絞ってご紹介します。

お客様のニーズに沿った提案力

接客ロールプレイングを通して気付くのは、提案力の重要性です。 そもそも提案力とは、お客様のニーズに合わせて納得のいく提案をする力のことをいいます。
つまり、お客様のニーズを掴む力とそれに対して適切な情報をもとに提案する力が必要になるわけです。
いくら魅力的な言葉を並べて提案したところで、それがニーズに沿っていなければ、お客様の心に響くものになる可能性は低いです。
またお客様のニーズをしっかり掴んだとしても、十分な商品知識・専門知識が無ければ、押し売りのような提案になってしまいます。 どちらが欠けても納得感のある提案にはならないのです。

お客様のニーズを掴む 接客ロールプレイングでは、お客様役にバラエティを持たすことで、様々なニーズを持ったお客様への接客を練習することができます。
まずお客様のニーズを掴むためには、お客様へ質問することが不可欠です。 その質問の仕方にもコツがあります。
接客ロールプレイングを行うことで、お客様のニーズに近づく助けになる質問がどのようなものか、逆にお客様を困らせてしまう質問がどのようなものか、だんだんと見えてきます。
繰り返し練習をすることで、みなさんの質問力は加速度的に向上することでしょう。

ニーズに合わせて適切な提案をする ニーズを掴むことができたら、それに対して適切な情報提供をしていきます。 ここで必要になるのが商品知識・専門知識です。
スタッフのみなさんは店舗の商品のエキスパートでなければなりません。
なぜならお客様のニーズに合わせて商品を探す必要もありますし、なによりその商品がなぜおすすめできるのかをご説明しなければならないからです。
他者に分かりやすく説明するためには、相当な知識量が必要になります。
商品の特徴や利点だけでなく、満たすことができるニーズや証拠としての第三者の意見なども頭に入れておく必要があるのです。
研修前にできるだけ情報を仕入れておき、接客ロールプレイングのなかで情報の伝え方を練習していきましょう。
ただ知っていることを話し続けるだけでは説得力のある提案にはなりません。 お客様のニーズに合わせて伝えるべき情報を取捨選択しながら、提案しましょう。

お客様が「商品を買う」以上の満足感を得られるような接客力

昨今オンラインショッピングの割合が増加し、店舗販売はその煽りを受けています。 しかしながら、店舗での購入はオンラインショッピングにはない良さがあります。 それは「商品を買う」以上の満足感を得ることができるということです。かくいう筆者もほぼ店舗に足を運んで購入しています。やはりスタッフの方と相談しながら決めることで、最も満足のいく買い物ができると感じられるからです。

お客様の満足度の重要性

お客様の購買に伴う満足感は、購入された商品そのものに対する満足感だけでなく、店舗の雰囲気やスタッフの接客など様々な要因が含まれています。
お客様の満足感、つまりCSは店舗・館全体にとって非常に重要です。
いくら商品の質が高くても、店舗が不潔だったりスタッフの立振る舞いが粗雑だったりするだけで、お客様の満足感は一気に低下します。
実際「商品は良かったけど、スタッフの態度がどうもよくなかった」ということはしばしば起こります。
そしてそう感じたお客様の多くが再来店を躊躇するようになってしまうのです。

お客様により満足していただくために

これだけ店舗販売にとって肝心な「接客」ですが、この質を上げる方法はたくさんあります。 身だしなみ、言葉遣い、表情など、すぐにでも改善できることもあります。
ほかにも、接客ロールプレイングではお客様をファンにする接客方法を練習することができます。 お客様に高い満足感を与えられる接客には「共感力」が必須です。
お客様は「商品」を買いにご来店されますが、その商品によって得たい「コト」があるはずです。
スニーカーを買いにご来店されたお客様は、来週のハイキングで足の疲れを気にせず楽しみたいかもしれません。
銘菓を買いにご来店されたお客様は、来月退社する同僚に感謝の気持ちを伝えたいかもしれません。
その商品によって得られる「コト」の価値を最大化するために、お客様の気持ちに寄り添い、その商品を使うのが思わず楽しみになるような接客を学んでいきましょう。

接客ロールプレイングを取り入れた実例

実際、どのようなお店が接客ロールプレイングを取り入れているのでしょうか。
アパレル、雑貨店、食品物販、レストラン、ファストフード店、サービス店など、その業種は多岐にわたります。実際に専門学校でも、ファッションビジネスを専攻している学生向けに実践練習として接客ロールプレイングが利用されています。
接客ロールプレイングの効果は広く知られているようです。

<接客ロールプレイングに参加したスタッフさんの声> 雑貨店 Cさん
アプローチをすることさえ接客ロールプレイングをする前は大変でしたが、アプローチもすんなりできるようになりましたし、アプローチした後も話が続くようになりました。ロールプレイングの練習をした後、初めてお客様からも接客してもらってよかった、感動できましたと言っていただけたので、それはとてもうれしかったです。
食品物販 Kさん
前にご来店いただいたお客さまがご購入されたものを覚えていたときに、「前回ご購入いただいたあの商品はいかがでしたか」「では今日はどちらにしましょうか」と聞けるようになりました。お客様からも「あら、覚えていたの」と気づいていただけることもあります。

接客ロールプレイングの具体的な流れ

1回の接客ロールプレイングには制限時間があります。物販が6分、飲食が5分です。 物販・飲食共に4分経過時点でベルを鳴らします。
主に、お出迎え→接客→お会計→お見送りといった流れで制限時間を使います。 接客の際は、お客様役の話を聞きながらニーズを掴み、商品を提案します。
短い制限時間のなかでどれだけ情報を聞き出し、お客様の気持ちに共感できるかが重要です。 終わった後は必ずフィードバックをしましょう。
改善点を見つけて次に生かすことで、接客力向上のスピードも速くなります。 改善方法やフィードバックについてはこちら→

接客ロープレ実施の際の留意点・ロープレの効果を最大化させるポイント

接客ロープレ実施の際の留意点・ロープレの効果を最大化させるポイント

接客ロールプレイングを実施するにあたって、どのようなことに気を付けるとよいのでしょうか。 ここではその効果を最大化させるポイントを3点お伝えします。

目的を意識する

目的を意識することの最大のメリットは費用対効果を最大化させることができるという点でしょう。 研修はどうしても多くの人の時間を奪ってしまいます。
できるだけゴールに向かって真っ直ぐ進めるように計画を練り、無駄な時間がかからないようにすることが大切です。

研修を計画する段階で設定した目的を常に意識しましょう。
研修担当は研修によって店舗・館にもたらしたい効果が、個々のスタッフには改善したい自分の課題があるはずです。
計画段階・実施段階で「このまま進めて目的が達成されるのか?」とこまめに確認しましょう。
確認を怠ると軌道修正に時間がかかり、結局は大きなタイムロスを被ることになりかねません。
スタッフ個人は、自分が特に改善したい部分や指摘された部分の練習を繰り返し行うことで、効率よく接客力を上げることができます。
どこをどのように直すと良かったのか・悪かったのか、メモに残しながら改善点にアプローチしましょう。
また接客ロールプレイングには大会があるので、そこで賞を獲ることを目標にすることも可能です。
しかし、接客ロールプレイングもその大会も、受賞するためにあるのではなく、実際にお客様にご満足いただける接客を実現するために存在します。
あくまで大会などはマイルストーンとして考え、店舗・館の目的やスタッフ個人の目的が上位概念であることを忘れないでください。

反省と改善を繰り返す

スタッフそれぞれが自分の目的を意識するという話がありましたが、それらの目的はただロールプレイングをしただけではなかなか達成されません。
やはり自分の言動のうちの何がお客様にとっていいこと・悪いことだったのか振り返る必要があります。
ロールプレイングをした後にそのまま振り返りをすることもできますが、自分のロールプレイングの様子をビデオで撮影してその映像を見直すことをおすすめします。
なぜなら自分の接客を客観的に見ることで今まで気がつくことのなかった自分の特徴や癖が見えてくるからです。
さらに自分の接客を見た人から積極的にフィードバックをもらって、自分の改善点を洗い出しましょう。
改善方法を考え、次のロールプレイングでそのアイデアを生かして再チャレンジします。 ここでは失敗しても問題ありません。
むしろこの試行錯誤を繰り返すことで、自分なりの接客が組み立てられ、さらに研ぎ澄まされていくのです。

スタッフ同士で互いのロープレを見ながら、良いフィードバックをする

他のスタッフの接客ロールプレイングを見ることも自身の学びに繋がります。
他者の接客は完全に第三者視点で見ることができるので、自分の接客を振り返るよりも精度高く分析することができます。
そのうちに自然と自分の接客と比較するので、新たな改善点を見つけたり、逆に自分らしい接客の特徴を掴んだりすることにも繋がります。
またお互いにフィードバックをし合うことで、「一緒に頑張った仲間」という意識が芽生えやすくなり、「○○さんが頑張っているなら私も頑張ろう」とお互いがお互いのモチベーションになることもあるでしょう。
この時大事なのは、短所ばかりに集中しないということです。 フィードバックというとどうしても「ダメ出し」のような短所を指摘するだけの時間になってしまいがちです。
しかしながら、接客には自身の長所、つまり「自分らしさ」を生かすことがとても重要です。
長所はなかなか自分では見出せませんから、他者であるあなたから相手へ伝えてあげましょう。

まとめ

接客ロールプレイングは、スタッフ一人一人の接客の改善だけでなく、店舗・館全体の売り上げ向上にも貢献し得る効果的な研修方法です。
実践的でありながら失敗が許されるので、他の形態の研修と比較しても、接客ロールプレイングによる接客力の向上はかなり速いです。
研修の効果も早い段階で感じられると思います。 ぜひとも接客ロールプレイングの導入を検討してみてください。


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